海に降る雪

 市内全域に及ぶ大停電となった。発電所からの主要な連絡拠点が落雷でダウンした。大きな落雷だった。

つづく

下りゆくエスカレーター

 何度か目が覚めたはずだ。起きようと思えば起きられただろう。一日の睡眠時間としては十分すぎるほど眠ったはずだが、それでも起きられなかったのは、昨夜の深酒のせいかもしれない。そうして何度目かに目が覚めたとき、はじめは耳鳴りのように、しかし次第にはっきりと、遠くに聞こえる祭り囃子か、サンタクロースのそりのような、鈴の音が聞こえてきたのだ。

つづく

カメラ・アナグリフの沈黙

出かけるまで少し時間があったので、爪を切っていたんだが、途中で切れなくなった。涙がポトポト止まらなくなって、指がそれ以上動かなくなった。

つづく

パンドラのメールボックス

 タイトルのあと、ブラックの間に雨音がフェードイン。

つづく

土気色のヴィーナス

 私は考えている。この卵を割ったら何が出てくるのか。

つづく

驚くべき光の中へ その2

 エミールは頭を抱えた。こんな雨じゃ手紙を出しに行けない。夜ももう長くはない。

つづく

アニマル・トーキング

頭痛薬を飲んだのが最後だった。悪魔ってのがいるもんだ。いきなりあらわれて、なにもわからないまま、魂を引っぱっていく。まあ、運が悪かったとしか言えない。

つづく

スルスエイの狩り場から

砂浜にたどり着いたのは、私の記憶の方が、少しだけ正しかったということだ。松林に垂れかかる夕暮れ時が、道行く人をみな串刺しにしている。あんなに、灰色の蒸気にむせかえる埠頭、斜めに焼き付いた朱色の光線、跳ね返る血のプリズム。

つづく

椀に夕日

 キルギリスが倒産したので、彼女らはどこか他のところで花を売るか、男のところに種を売るか、郷里に戻って油を売るか、しなければならなかった。

つづく

パルス・ライダー

 簡単に言ってしまえば、私は超能力者としてその人の頭の中に入ることになったのだ。

つづく