朝もやの少女A

 うたた寝をしていたら、深夜三時頃に目が覚めた。それからうたた寝をしていると四時過ぎにまた目が覚めて、うつらうつらする内に五時過ぎになって、どうもそれからうたた寝をしていたらしく朝の七時に目が覚めたとき、どこかの寺の鐘が鳴っていた。
 鐘はその響きを朝もやに滲ませて、じっくりと、しぼんだ浮き輪が沈んでいくくらいの速度で、ひとつひとつ、手応えを確かめるように鳴り続けた。私はもう一度時計を見た。おそらく七回鳴ったのかもしれない。私は夢見心地で枕に吸いつきながら、坊さんが何を頼りに鐘を撞いているのか、音の響きが消えたら一回、般若心経を一行読んだら一回、同じ所をそらんじてもう一回、煩悩がひとつ浮かんだら一回、消えたら一回、ついでにもう一回。
 しかしこんな時間に目を覚まして、こんな朝の音色に耳を澄ますことが、いつかまたあるだろうか。あればいいけど、ないだろう、さみしくはないが、などと考えて、煩悩を浮かべながらまた眠った。

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