20062.21
なんか最近、あんまり出歩いてないというか、運動が極端に足りないのか、ちょっと外に出ると、歩くときに膝がやたらとポキポキ鳴って、どっかいっこ小さい骨がなくなってるんじゃないの、というくらい我が足ながら頼りなくて、人の少ないとこで立ち止まって、二、三回屈伸してみたりするけど、一向に改善する気配もなくて、ついに今日の昼過ぎ頃、横断歩道で信号が変わるのを待ってるときに、キュッキュッと膝を動かしてみたらとうとうクキッと言って立たなくなった。
幸い近くに病院があったから、おかしくなった足をひきずって、入口の段差を四段くらいようやく上がって、事情を説明したところ、うちは内科外科泌尿器科だけだから、整体外科を紹介すると言って、とりあえずタクシーを呼んでもらって、その整形外科に行ったら、運転手が道が細いからこれ以上入れないと言うもんだから、仕方なく線路沿いのフェンスにしがみつきながら歩いているのを、フロントガラス越しにタクシーの運転手がずっと観察していた、ような気がする。
整形外科の医者は、どうやらこれはあなたの足には、骨の代わりにアスパラガスが入っているらしいと言って、確かにレントゲンに写っていると言って、暗い病室で大した灯りもつけずに、ピンボケ気味のレントゲン写真を見せられて、なるほど確かにアスパラガスが写っていますね、と言ったのは僕の足に何か軟膏のようなものを塗っていた看護婦で、それはおれのセリフだろう、と言ったのは医者で、いったいこれはどうなっているんだ、と言いながら病室に入ってきたのはタクシーの運転手で、僕は僕で看護婦の塗る軟膏が次第にゼリー状に固まってきて、それがちょっとやたらとたっぷりで、看護婦の指先があらぬ方面に伸び始めて、御法度、御法度、と言いながらタクシーの運転手が馬乗りになって現れて、医者は看護婦とすり替わって僕の不思議を優しく紐解いて、気がつくとタクシーの座席でうとうとしていたらしく、変な夢を見たもんだ、と煙草に火を付けて、今夜はちと気張ってやらんとな、と背伸びをして、路地の植え込みに立ち小便をして、煙草をもみ消して、今夜もまた眠らないネオンの海へとアクセルを踏み込んだ。
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