エスパーA

電車を降りて、改札を抜けるまでに考えました。

オカルトは好きな方です。UFOも幽霊もユリゲラーも、どちらかと言えば信じています。
確かに家の本棚には、宇宙人の死体がどうの、石ころの降る家がどうの、モルダーやスカリーがどうの、コリン・ウィルソンがどうのといった本がいくらかあります。
ついつい忘れがちになっていますが、私のすぐそばに、幽霊の見える人もいます。夜道を歩いていて、何のヘンテコもない何かが、ふとなぜか気になって視線をやると、そこにいるんだそうです。ヘンだから見るのか、見るからヘンなのかは、また卵の話になるのでやめておきたいと思います。あ、ヘンっていうのは、幽霊の見えるポイントのことですよ。頭のことじゃなくて。
「無い物ねだり」だと言われればそれまでですが、見えないんです。私。
何も見えません。UFOも幽霊もユリゲラーも、見たことがないんです。飢えているのかもしれません。渇いているのでしょう。私の脳味噌のオカルト野が、足りない養分を少しでも補給するために、電車を降りて、改札を抜けるまでに考えたのは、つまりこういうことです。
それは、さっきの卵の話を借りて言えば、ヘンだから見るのか、見るからヘンなのか、ということです。これは頭のことですよ。きっと頭の使われていないどこかのことです。

私は駅舎の階段を下りながら、元気いっぱいの女の子が笑いかけてくれる何かのポスターを、ジッと見つめてみました。
私の頭の中で、それはビリビリにやぶれて北風に舞って飛んでいきました。

trackback URL:

お気軽にコメントください。

comment: