シー・シーズド・ザ・サン

なんかやたらと疲れが溜まる。もんだから、久々に風呂を溜めてみた。四十二度に設定されてたから、よくわからないのでそのままにしといて、よくわからないから、百リットル溜まったらコールしてもらうことにした。コールしてくれるのだ。こんなさみしい部屋に、風呂が溜まりましたよ、と。私も機械になりたかった。それまで暇だからスーファミをしようと思ったんだけど、デジカメが壊れてたのを思い出して、保証が切れてないか確かめることにした。と、その前に、忘れないうちに調べなきゃいけないことがあったんだった。じくじ、じくじ、頬を染める。あの人もきっと頬を染める。そこに私がいればよかったのに。もっとメカニックを目指したらよかった。そしたらもう少し、あの人の頬は染まったろうか。ピーッ、ピ、ピー。ピー、P、P。わあ驚いた。うそだよ。驚かないよ。どっかで聞いたな。どこだっけ。なんか大事なことだったかな。思い出さないな。脳味噌が減ったかな。バカには馬の骨でもしゃぶらしとけばいい。はいはい。わかってますよ。風呂が炊けたのね。ジャーじゃあるまいし。ジャーなんて嫌いだよ。中はからっぽだし。からっぽの頭で世界でもなんでも考えればいい。みんなしてにこにこしやがる。もう、ジャーになってしまいたい。それで、輸入米でも炊いてりゃいいんだ。わあ、驚いた。今度はほんとに驚いた。なんていい湯だろう。じゃないよ。ばか。さて、そこをどいてもらおうか。おれが入るんだよ。勝手に人んちの風呂で孵化してんじゃないぜ。まったく。百度くらいにしときゃよかった。ずいぶん掃除してなかったのはおれが悪いけど、こんなでかいボウフラが涌いたのは、換気扇が筒抜けのせいだ。それと動物園のせい。それにしても、ボウフラめ。何か言いたそうだな。妙な目つきで見やがって。くそう。涙が出そうだ。こんなおれを笑えばいい。人間なんてやめてしまいたい。湯気が目に入ったんだ。「そんなことありませんよ。あなたは立派な人だ」なんてことを、ボウフラが言うんだよ。ばかにしてる。まったくなんて目つきだ。なんて目をするんだ。くだらない。たのむから、そんな目で見ないでくれ。「あなたにはぬくもりが必要なんです。四十二度よりももっと。そうすれば万事うまくいきます。かわいそうに。ひとつだけの、それから、少しばかりの愛を」

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