20064.19
一年前のちょうど今ごろ取り逃がしたポッポちゃんが、なんとまだ部屋の中にいた。ほこりに埋もれた蛸足コードを、手探りでまさぐっていたときに、とつぜん、ひらひらと目の前に飛び出した。それは一瞬、舞い上がったほこりのかたまりに見えた。でも二瞬するときにはもうわかった。ポッポちゃんだった。どこかに巣を張って生きていたのだろうか。光の加減で消えてしまいそうな、あやういからだをふわふわと浮かべて、やわらかい曲線を描いてテレビの角にとまった。吹き飛ばしてしまわないように、おそるおそる顔を近づけてみると、ほんとうにそれはきれいな、雪の結晶のように見えた。まるで生き物とは思えないからだを、ときどき細かくふるわして、ゆびさきでそっとさわったら、そうだ、あのとき、たしかにさわって、あのときも、きえてしまったんだった。ほら、またきえてしまった。ゆびさきに白い鱗片を残して。ずいぶん掃除もしていないから、無理もない。蛸足のほこりを払って、ゆびさきをズボンでぬぐってから、掃除機のコンセントを入れた。ハウスダスト症候群になる前に、このほこりをなんとかしなきゃいけない。
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