20063.23
まったくもって悲しいことだが、その日の蝸牛レースは大波乱の内に終わった。誰一人買っていなかった蝸牛が一着に入ったのだ。というのも、最終コーナーを回った時点で一着だった蝸牛が、もちろんこの蝸牛が一番人気だったわけだが、どういうわけか突然殻にこもって出てこなくなった。そして続けてやってきた蝸牛が次々に膠着し、最後尾を這っていた最低人気が騒ぎに乗じてゴールした。つまり、誰も買っていなかった蝸牛が、誰も買っていなかったために、一着になったのだ。場内は渇望に冒されていた。それぞれの念が、それぞれの蝸牛を殺したのだ。そういうことが、その日たまたま起こったのだ。まったくもって悲しいレースだった。誰一人として、その日は幸せにならなかった。
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