20063.4
家に帰ったら、電気がつかない。グローランプ? 豆球? なんだかよくしらないけど、うんともすんとも光らない。こういうときのために、おれは用意してたんだ。
と言って、藻作は彼のひきだしを開け、彼のピカピカの走馬燈を、暗い部屋につるした。
これから、彼の物語が、その閃光に合わせて一瞬のように繰り返されるだろう。そうして語られる彼の断片は、街の光のどれかひとつとなって、私のところにも届くかもしれない。もし届いたら、それをここに書き写そうと思う。
水音がする。
締め損ねた蛇口から垂れる。
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